漫画論


No.1
2002.3.8
ゆたんぽ氏

「漫画論」
手塚マンガ=ビートルズ&ストーンズ、その周辺
石森マンガ=プログレッシブ
赤塚、不二子マンガ=ハード、ヘヴィ・メタル
高橋マンガ=パンク、ニューウェーブ
これ絶対です。なぜなら少年漫画の歴史とその王道は〔ギャグ&風刺〕だからです。
スポーツもの(スポ根)も手塚漫画の亜流です。ロックンロールかR&Bなんです。
ヒーローの活躍する世界観と環境を矮小し、道具を限定したに過ぎないのです。
そうじゃない!って言う人にいつも私が答えるのは、「どこで感動したの?」です。
〔巨人の星〕でも〔ドカベン〕でも、根底は人間ドラマです。
水島漫画で〔あぶさん〕があれだけ長寿なのは、その人間ドラマを強調しているからです。
ところが石森漫画はコンセプトやストーリーのみならず、〈画・吹き出し・コマ割〉と何から何まで実験と創造のオンパレードです。
(テレパシーの吹き出し、通信の吹き出し、均等分割でない斜めに区切ったコマ…横長にアップだと緊迫感を、縦長にぽつりと立てば不安感をなども、全部石森先生のオリジナルです。)
特にこのあたりの創意工夫と技法の凄さをいち早く気づいたのは、少女漫画家に多いです。
プログレッシブな作品が少女漫画に多いのはここに端を発しています。
手塚先生を慕って上京してきた石森少年は、作品を発表するごとにスケールアップしていき、後の手塚先生が猛烈に嫉妬したのは有名なお話です。
漫画の歴史を生み出したのは手塚先生ですが、漫画を進化させたのは石森先生です。
ところが、そんな技法だけでなくキャラの魅力と、王道(ロックンロール)を行くギャグのみで突き進んだのが『うる星』だったんです。
(注:現在の高橋先生は技法も創意工夫もオリジナリティにあふれています。)
だから、高橋先生は漫画の歴史を変えた人となるのです。


 
NO.2
 レス・

 
2002.3.8
 素人氏

 「レス
なるほど。マンガの歴史は考えた事が無かったので勉強になります。
今では常識となっている自由なコマ割は石森先生から始まるのですね。
でもほんと、うる星のキャラって魅力的です。
<世界に誇れる文化>ほんと、そう思います。
日本はマンガの国といえるぐらいマンガがあふれていますからね。

失礼を承知の上で言いますが、
巨人の星って私にはギャグアニメにしか見えないんですが・・・
埼玉テレビで再放送していたときに見ていましたが、
突込みどころ満載でした。(すべての物理法則を無視したような技の数々、無意味な技、等々)
<人間ドラマ>言われてみれば・・・かなり誇張されていましたが。
原作も読んでいない人間がこんなこというのは身分不相応ですね。失礼しました〜。

巨人の星つながりですが、うる星の「父よあなたは強かった」で
あたるがまじめな顔をして数秒後に顔が崩れたとき、ピシッという音と共に
あたるが「破滅の音が〜」といっていますが、
これって巨人の星の破滅の音(ひじが壊れるときの)ですよね?


 
No.3
 レス・
 2002.3.8
 ゆたんぽ氏

 
「レス」
素人様。
アニメ〔巨人の星〕への感想は、それで正しいですよ。
絵が未熟、技巧が稚拙、音声と絵がずれている…色々ありますが、それ以前の問題として〔根本〕が変です。
これは原作にも通じるところですが、巨人軍を目指す親子の夢…その動機が浜茶屋再建なみに可笑しいですし、小道具諸々も児童虐待にしか見えません。
ただ姉の存在がけっこうこれを救っていて、ジャイアンツに入団してからは人間ドラマのほうが強調されていくので、原作はアニメほど悲惨ではありません。
その原作ですが梶原先生もまだ若く、週刊モノでかなり熱くなっていますし、それに感化されたのか絵の川崎先生もかなり暑苦しいです。
でも、この可笑しさはどこから来るのかと言えば時代の変遷なんですね。
当時は〔巨人・大鵬・卵焼き〕と言って、男の子の好きなモノはこれだったんです。
現役の頃の長嶋さんや王さんは、神様に近い存在だったんですよ。
あと〔大リーグボール〕等の技ですが、これは少年向けの漫画では当然の事です。
野球モノなら、ちばてつや先生の〔ちかいの魔球〕、井上先生の〔侍ジャイアンツ〕がこの前後にあります。(全部巨人軍だ!)
〔ドラゴンボール〕、〔北斗の拳〕、どれも技の応酬でしょ?
記憶に残る名作でしたが、歴史に残るのかどうかは不明です。
私は〔巨人の星〕〔新・巨人の星〕共に捨ててしまいました。
梶原先生原作なら、〔あしたのジョー〕がありますし(この主人公はクールで良い)、川崎先生なら〔いなかっぺ大将〕がベストですね。
(〔荒野の少年イサム〕〔アニマル1〕〔てんとうむしの歌〕なんかは、妙に暑苦しい。)
特に〔あしたのジョー〕は歴史に残る名作ですので、是非読んでみて下さい。
私的にはスポーツモノはあまり好きではないんですよ。暑苦しいから…。
このジャンルで愛読しているのが、やまさき先生の〔優駿の門〕(競馬モノ)です。
動物だと暑苦しさが減じるのは不思議ですね。また主人公がクールなのも良いです。
(5巻のアルフィーの死は泣けるよぉ!)



 No.4
 レス・
 2002.3.9
 NbU氏

 「レス」
<高橋マンガ=パンク、ニューウェーブ>
こう言い切ってしまう方と、お近づきというのは、なんだかとてもうれしいです。
ほかの作家の「=」も(音楽には疎い私にも)雰囲気を感じられます。
マンガの歴史と言うと、私には入れ替わる世代ではなく広げられてゆく「枝」のイメージが強いのであいまいなものになってしまいます。表現するモノは作者の個性に由来すると思いますので作家の俯瞰は表現によるものになります。
手塚マンガの系譜は、アメリカ映画的な整理された時制が当時として新鮮だったのかもしれませんが、話を膨らませようとするとインフレに陥るきらいがありますよね。(オールスター化、諸国漫遊。敵は無限に強くなるし。その意味ではアトムの「10万馬力」には手塚先生のセンスを感じられますね、(戦後のミリタリーブーム)当時の少年にとっては10万馬力は「駆逐艦並」、子供の想像力の無理のない範囲で「より強力な」敵を設定できます)
おかずは増えてますが、以後のほとんどのマンガはこの「文法」で語られていると思います。
<石森マンガ=プログレッシブ>
プログレ、と言われるとユーロな気持ちになってよく怒られるのですが。石森マンガ(倣う、ゆたんぽさん)では「時間が均一には流れていません」ね。私には手塚漫画との最大の違いはそのあたりに感じられます。「加速装置」も石森マンガであればこそあれだけの威力を発揮したのだと思います。
感情や情景をストーリーに流されずに幾らでも深めたり純化させることができる。
紙の上の表現として手塚的な共通点も見られるにしても、「枝」ではなく根っこが違っているのかも。
(余談ですが、佐布と市における日本髪の解けた女性キャラは私のコミック色っぽいベスト(作ってない!)でトップにランクされています)
<高橋マンガ>
ストーリー的には小池一夫門下らしくコミック=キャラクターを徹底されていますし、その上で社会性よりも、その「二人」の間にだけ発生する特別な関係の危機(だけに)とことん拘るのがすべての作品に共通するテーマだと思います。
表現的には、事実上のデビュー作「うる星やつら」では、当初、場面転換や時間経過を表すためだけのコマが随所に使われており、その意味では「非常に」オーソドックスな構成でした。
手塚的とも言える、編集者にとって無難な教科書どおりの展開。
おそらく作者自身がそれを「面白くない」と感じられたのでしょう。そういったコマに対するオチャラケから始まり、「それに意識して反発する」歴史がるーみっくの画面の上での進化の歴史であったと認識しています。そういった判り易さを否定するのでは無しに捕り込んで消化し、別の形で実体化させる。
犬夜叉では、遂に1ページ立ちキャラ一人の大ゴマが出現します。何の背景もない作家がやったら安直なピンナップになってしまうんでしょうが、それをはじめてみた時、私は震えました。


 No.5
 レス・
 2002.3.9
 素人氏

 「No.3、ゆたんぽさんへのレス」

は!盲点でした。
バリバリのドラゴンボール世代の私はなぜかドラゴンボールを普通に受け入れてました。
よく考えると巨人の星と同じぐらいむちゃくちゃな技にあふれていますね。
ドラゴンボールを馬鹿にしていた親の気持ちが少しわかったかも・・・
夢の中でかめはめはを出し、舞空術で飛んでいたあの頃が懐かしい。(笑)


 No.6
 レス・
 2002.3.9
 ゆたんぽ氏

 「No.4、NbUさんへのレス」
なるほど、そうかぁ…。あれで震えたのかぁ…。(感性は人それぞれなので…。m(_ _)m)
リュウ3部作〔原始少年リュウ・リュウの道・番長惑星〕を読めば、出尽くした感のある表現ではないかと…。
むしろ眼を向けるべきは、高橋先生にとって初の長編ストーリー漫画であり、伝奇モノの体裁をとっている事です。
この伝奇モノは短編で幾度か試み、あの先生またこれが非常に巧いんですね。
それを連載で行っても破綻がなく、読ませる力と技量…ストーリー構成ですか…こちらに私は感動しました。
それと何と言ってもキャラ作りですね。これはさすがです。
半村良先生に勝るとも劣らないストーリーとおどろおどろしいキャラを編み出せるのにも関わらず、犬夜叉を描いている…。ホントのプロだなと思います。
でもファンに読ませるための漫画でなく、高橋先生が内面でイメージしているであろう総てをそそぎ込んだ『犬夜叉』が読みたいですね。
しかし、それだと連載が打ち切られちゃうんだろうな…。それが漫画雑誌の壁なんでしょうね。
高橋先生は今までの作品全部が完結しています。真のプロフェッショナルですね。
(あの手塚先生も、石森先生も、連載打ち切りを何度も喰らっています。またそういう作品に限って、名作が多いのは何故? 『火の鳥』『009』どちらも未完のままです。)


 No.7
 レス・
 2002.3.10
 NbU氏

 「レス」
 <人それぞれ>ですねえ、落ち着いて客観的に見れば効果としてそれほど際立って見えるわけでもないし、(ちなみに私が震えたのはコミックス8巻第3話P52の犬夜叉。前回から引き継いだ構成の流れの中での立ち姿です)ツインピークス、パイロット版の冒頭とか、「コテコテ」に技巧に走った演出に「きちゃう」気のある私の独断です。高橋先生が、先人のやり倒したことも含めて色々なことをやってきてここで一つ「、」を打ったように感じましたもので。(以降の犬夜叉に、私は自由な軽やかさを感じます「構成的」にですけど)
高橋先生が内面に何を抱えそれをどう出して来るかは興味のあるところですけど、「次」なんじゃないでしょうか。それが人魚になるか、新しい連載になるか、あの方のプロ意識はあえて言うまでもありませんが、こういう形で始めた犬夜叉にファンがついた以上、犬夜叉ではやんないでしょうね。なぜ特に「次」なのかは漠然とした予感ですけど。


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